大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

長崎地方裁判所佐世保支部 昭和34年(む)1321号 判決 1959年10月30日

被告人 池田兵三郎

決  定

(被告人・申立人の氏名略)

右被告人に対する詐欺被告事件について、当裁判所裁判官が昭和三四年一〇月二〇日なした保釈却下決定に対し、右弁護人から準抗告の申立があつたので当裁判所は次の通り決定する。

主文

本件準抗告を棄却する。

理由

本件申立の要旨は、被告人は本件犯行の一切を認める等罪証隠滅の虞れはないから原決定は不当であり、又被告人自身弁償に努力したいから之を取消して保釈許可の決定を求めると言うにあるが、記録によれば本件は昭和二七年の犯行であること、本件の成立に重大な影響を及ぼすと考えられる金員の使途については必ずしも明白であると言えない事、本件被害者は被告人の友人であつた事、被告人は犯行後昭和三一年迄言を左右にして被害者の追及を遁れ、その後逮捕にいたる迄長崎市内に逃走していた事、等の事実が認められ、更に、裁判官の勾留尋問に対する被告人の陳述の内容が否認と考えられること、数年間も逃走している被告人が今更金策して弁償するため出所したいというのも額面のままは到底受取り難く、従つて弁償名目の交渉の実質が何であるかが甚だ疑問とみるべく、本件事案の性質及び右述の如き被告人の態度を併せ考えれば、被告事件に対する陳述もいまだなされていない訴訟の現段階においては罪証隠滅の虞れがあるものと言うべく、原決定は相当であり、本件申立は理由がない、

よつて刑事訴訟法第四三二条、第四二六条に則り主文の如く決定する。

(裁判官 立山潮彦 林繁 浅野達男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例